これからの時代グローバル投資は必須 ひたすらオフショアファンド!規制や英語にめげずに海外投資、不動産、FX 調査と経験の全記録

タグ:国際経済

カスピ海チョウザメの英語から名前を取ったスタージョンキャピタルSturgeon Capital Ltd。ロンドンに本拠地を置きますが、その活動場所は中央アジアです。

このブログでも運用開始当初からウォッチしているSTURGEON CENTRAL ASIA EQUITIES FUND。原油価格の下落とそれに連れてロシアの株と通貨の下落で随分、苦労しましたが、ようやく、陽の目を見ることができそうです。2016年2月から三ヶ月連続でプラスのパフォーマンス、年初来も+7.2%にまで浮上してきたのは非常に心強いです。

イメージ 1

このファンドはルクセンブルク籍でありながらも、RL360 PIMS、ハンサードUPP,フレンズプロビデントリザーブの他、ジェネラリやオールドミューチュアルからもUSD10kから購入できる手軽さもあって、私はまっさきに飛びつきましたが、確かにタイミングとしては早すぎました。しかし、それはたまたまその時期に原油のマーケットが材料視されただけのことです。それはつまりタイミングだけの問題であって、方向性自体は正しいものだとの判断で、投資を継続させています。

イメージ 2

私の買ったNAVまで完全浮上まではもう1,2年かかるでしょうけど、それまでには、実際に渡航して様子見するとかの楽しみもありそうです。実際、アゼルバイジャンからは視察に来てね〜と招待うけてます(往復は自費)。

旧ソ連の中央アジア諸国の原油などその国土から産出する資源を管理方法と、中近東のイスラム教国が管理する方法とは対象的であり、従って中央アジアファンドの方は、どうしても資源関連株が多くなります(理由は勉強会のお楽しみ)。

イメージ 3

また、ウクライナを代表するように各国で独立志向があろうとなかろうと、少なからずロシアの影響を受けるということを考慮しておかなければなりません。ですから、すでにロシア株に突っ込んでいる方は、被ってしまうことを承知しておかなければなりませんし、ロシアを避けていた方には、ロシアに近いアンチロシア投資を楽しめることになります。

地理的に遠いので、気軽に旅行もままならず、よってなかなか日本から親しみをもつことができない地域ではありますが、ラップ口座をお持ちなら、乗り換えは紙一枚でできる(できないなら移管が必要)ため、投資を切り口に、この地域への知見を広めるというキッカケになるかもしれませんね。

オフショア投資ブログのランキング。面白いのでぜひクリックしてみてください。 ブログ記事に関する詳細な質問、ファンドリストなどについてはメールで(コメント、メッセージではお返事いたしまません)。気に入った記事にはナイスボタンお願いします。その話題を優先的に取り上げます。

26日の積立投資勉強会、まだ空席あります。

Dominion Fund Management Limited ("DFML")の公式サイトがどんどん進化しています。まぁ一度みてみてください。もうキラっキラしてます。

誤解を避けるために、改めて明記しておきますが、このファンド投資先の銘柄はゴージャスな経営戦略で付加価値を上げることに成功した会社です。その会社は、ルイビトンとかハリーウィンストンだけではありません。

あくまでもエンドユーザーレベルから銘柄を選択するのです。つまり、このファンドの投資対象としている会社は、決して世界のお金持ち、富豪だけを相手にしている会社ではありません。どちらかといえば、所得層にかかわらず可処分所得が高い人、いや、もっと悪く言えば、どうでもいいことにお金をルーズに使ってくれる人が多ければそれでOKです。例えば、20億円の価値の田んぼや畑を持っていても毎日作業着きて、野菜育てて、夜遊びもしない人の行動半径に、このファンドの投資先はありません。しかし、年収200万円しかないのに、マクドナルドの100円コーヒーではなく、わざわざスタバで単価の高い飲み物を注文する人が出入りするような場所には商機があります。

イメージ 1

イメージ 2
つまり、質素な人が、ゴージャスな生活している人の集う会社へ投資することで、成功するというストラテジーなんです。それって私にぴったりです。 骨折するかと思うくらい本気で最強の按摩を受けたいからって、春秋航空に乗って1泊上海まで行くような、私のライフスタイルそのものです。ですから、もちろん投資してますし、長く保有するつもりです。

その自分が実投資していて言うのもなんですが、ひとつだけこのファンドに対して、文句があります。それは最近パフォーマンスが下がっている、ということではありません。この環境下、下がってなければ気持ち悪いです。そんなのはいいんです。そのうち上昇しますから。

でも、ファンドのサイトまでゴージャスにするのはいかがなものかと思いますよ。自分もECサイトの構築はやってますが、どうせ外注にだすなら、質素でもゴージャスでもサイトの構築費用はかわりません。

でも、派手すぎて、どこにファクトシートがあるのか一苦労するのもなんだかなぁ、と思います。必要な情報だけ提供してくれる、質素バージョンってのを作って欲しいですよね。

海外渡航不要の投資家紹介にてUSD10kから直接投資もできますが、RL360PIMSなどラップ口座経由でも購入できるので、そのほうがFATCA対策としても楽です。

フショア投資ブログのランキング。面白いのでぜひクリックしてみてください。 ブログ記事に関する詳細な質問、ファンドリスト、オフショアファンド移管相談などについては実名のメールでbyh00122@yahoo.co.jpまでお願いします(コメント、メッセージではお返事いたしまません)。気に入った記事にはナイスボタンお願いします。その話題を優先的に取り上げます。

HSBCの株価が滑り台になっており、2003年ごろには7ポンドあった株価が今では4ポンド目前というレベルまで下落しています。
それもそのはず、一般的な赤字に加えて、ミスせリング(金融商品の内容やリスクを誤って、若しくは故意に異なる説明をして販売すること)の訴訟対策費用が四半期だけでUSD700Mもかかっているのですから。
ただ、これはHSBC個別の問題ではなく、どこの欧米銀行も金額の多寡はあれども同様の問題を抱えており、どこの銀行もこれはとにかく一刻も早く支払って、綺麗にして再出発したいという思いがあります。

ニューヨーク上場企業Ameriprise Financialの運用部門子会社、THREADNEEDLE ASSET MANAGEMENT HOLDINGSAMERICAN EXTENDED ALPHA FUNDが向かうところ敵なしという勢いで、これまたえらく上昇を続けてます。

イメージ 1

チャートをみてください。リーマン・ショック以降は、ほぼ綺麗な右肩上がりですよね。モーニングスター社三つ星だけのことはあります(イギリスポンド建ては四つ星獲得)。でも、右肩上がり大好きな日本人のみなさん、勘違いのないように、、、これでも立派なUS Large Cap Growth Equityファンドなんです。

イメージ 2
メイン投資のその主役ともなるべきアメリカ株のファンドでこれだけの成績を出してくれていたら、分散投資ポートフォリオを組み上げるときにも助かりますよね。Bloombergのティッカーシンボルもあるので、RL360 PIMSからでもいけるでしょうし、信託報酬も年率1.63%とアクティブな株式ファンドにしたら比較的リーズナブルです。

私が運用資産のポートフォリオを構築するときにまず決めるのが、メイン投資とオルタナティブ投資の割合です。そして、メイン投資は大手運用会社に秀逸なオフショアファンドが揃っているので、これらをラップ口座を利用して買い揃えます。そして、オルタナティブ投資部分は、ノンバンクビジネスファンドなど引き続きラップ口座経由で購入できるものは、そのまま購入し、とっておきのものは手間はかかれど敢えて直接投資で行く、というスタイルを取っています。

オフショア投資ブログのランキング。面白いのでぜひクリックしてみてください。 ブログ記事に関する詳細な質問、ファンドリストなどについてはbyh00122@yahoo.co.jpまでメールで(コメント、メッセージではお返事いたしまません)。気に入った記事にはナイスボタンお願いします。その話題を優先的に取り上げます。

我が家は年末の大掃除は最小限にしてGWにやってます。でもさすがに仏壇のホコリくらいは綺麗にしないとバチが当たりそうで、ミニマムなお勤めを果たしました。

J O Hambro Capital Management のモーニングスター社四つ星、アジア中小型株ファンド。チャイナや東南アジア株式市場全体が少しづつでも持ち直してきていることもあって、もちろん、このファンドのパフォーマンスも回復基調です。

イメージ 1
MSCIのインデックスをアウトパフォームしているのは、アクティブに運用しているJOHCMのファンドマネージャーの実力によるものだと、以前から説明してきました。

今日は、その点は重複するので、全部飛ばしてしまいます。

イメージ 2
それより報告しておくべきは、法域別のアロケーションを大幅に変えてきたことでしょう。

あらら、マレーシアが入ってきてますし、韓国もベンチマークよりもプラスに転じてきてます。そしてインドは少々減らしてきました。

ただ、これ、実はさほど変ってはいないんです。というのもインデックスに対してどれくらい重きをおいているか、軽んじているか、棒グラフを見ると派手にチェンジしたように見えますが。よく、数字のほうを見ると、なんと全部1%未満です。ってことは、逆に、最近はベンチマーク通りに均して様子を見ているのかも、と想像ができますね。

イメージ 3
となれば、比較グラフではなく、絶対値の表で見てみましょう。このファンドのインド好きは変わってないことがわかりますし、グレーターチャイナ(大陸に香港や台湾を加えてたエリア)がメインになっています。そしてマレーシアが入ったとは言っても、また4.0%です。

一旦、チャイナ株復活のメリットを取っておいて、再び細分化をかけようかな~なんて思惑があるのではないかと想像できます。

来年も大胆なアロケーションで、注目を集めてくれるファンドになると思います。

渡航不要の投資家紹介にて、直接投資も可能ですし、ラップ口座経由でも購入できる一般的なオフショア投資信託です。

オフショア投資ブログのランキング。面白いのでぜひクリックしてみてください。 ブログ記事に関する詳細な質問、ファンドリストなどについてはbyh00122@yahoo.co.jpまでメールで(コメント、メッセージではお返事いたしまません)。気に入った記事にはナイスボタンお願いします。その話題を優先的に取り上げます。

今日はiPhone修理の行列にまぎれて、渋谷のアップルストアへMacBook Proの修理依頼に行ってきます。修理保証期間が切れた頃に全く同じ症状で修理を繰り返して、その度に4万円+税を支払ってます。今回も4万円となったら、もう修理はやめようかと。Officeが付いてるレノボのWin8タブレット端末買ってもお釣りがきますもんね。

それはオーストラリアドル対スイスフランです。お互いに主要国通貨でありながら、両者の関係は、産業構造の比較や貿易統計等から考えても殆どないと言っていいでしょう。一見経済的には殆ど関係ない両国の為替取引は当然に細い、と思いがちですが、ところがこの通貨ペアは世界的には結構な取引量が手がけられているのです。
この通貨ペアが手がけられる理由もまたシンプル。世界経済が好調→コモディティ価格の堅調推移との連想からオーストラリアドル買い、一方で世界経済の不調または地政学的リスクの高まり→危機回避のイメージからスイスフラン買い、の対極的な材料が存在します。これはもちろん先日のスイスフランを買い上げてすぐ売られるような投機的な動きが目立つこともあるにはありますが、本来はデイトレードあるいは短期的な材料ではなく、世界経済の動向を見越して徐々に発生する中期的なフローとして捉えるべきものです。

イメージ 1

チャートでは世界経済にブルなら上方向、すなわちオーストラリアドル高スイスフラン安方向、世界経済にベアなら下方向、すなわちオーストラリアドル安スイスフラン高に動きます。
細かい歴史の授業は割愛しますが、世界的なIT景気から、9.11とイラク情勢、その後の成長、サブプライムローン問題からリーマン・ショック、その戻り、ギリシャ危機と素直な上下動が見て取れることがわかります。この中で誰の目にも明らかなのはリーマン・ショック後の戻りは、実体経済の回復に比べて急激すぎた、ということです。急激すぎるものは調整されます。
現在は調整後の半値戻しから61.8%戻しのある意味、心地よい水準です。世界経済のセンチメントはリセットされたニュートラルな状態と言えるでしょう。
ポイントはこの世界経済のセンチメントを表すベンチマークと言うべきオーストラリアドル対スイスフランの水準がニュートラル、しかし日本人の世界経済に対するセンチメントは弱気一辺倒。
この差をどう捉えるかを考えていただきたかったのがこの記事の主旨でした。

おわり

この話題、はよ完結させてんかーというメールをたくさんいただきましたので、一気に行きたいと思います。なお、勉強会で話題にしました、テクニカル分析とは全くことなり、こちらはファンダメンタルズ分析からの切り口です。

もう一つ、長期予想とか中期予想とか何気なく書いていますが、短期(1年以内)はともかく、一体中期と長期の線引きはどこなんだというご質問もいただきました。正式な言葉の定義はありませんが、こと為替の予想というこの話題に関しては、景気循環1つ分以上先を長期、それまでを中期としてみたいと思います。一番短い景気循環をキチンの波(40ヶ月程度)と言いますが、内閣府の発表する日本の景気基準日付をみるともう少し長いようです。そこでキリの良い最長5年、最短1年を中期の基準としていいのではないかと考えています。



前回までドル円相場を中心に話を進めてきました。この中でフローの方向性や流量を決定する要因は、基軸通貨や主要国通貨であればあるほど複雑化するということがお分かりいただけたかと思います。ただ、この記事は私からこれらを並べて今後円安だ、円高だと主張することが目的ではありません。読者の皆様に頭の中を整理してもらい、一つの要因だけをことさらに煽る話、浮いた話に流されないようにしていただくのが目的です。

そこで、前回までと検証通貨をかえてみましょう。ドル円相場は複雑度で言えば、★★★★☆です。少なくとも世界の通貨の中で最も複雑な要因を持っているアメリカドルや、日本サイドの話題だけなので、少なくともアメリカドルの半分以下の複雑さではあるものの、それでも先進国としてのプレゼンスがあり、様々な角度から検証しなかればならない日本円との通貨ペアですから。もちろん複雑度★★★★★はユーロドル相場でしょう。ユーロという通貨の性格を考えれば想像に易いと思います。

いずれにせよアメリカドルを相方にすると複雑度がアップしてしまいますので、簡単化の為に米ドルは外しましょう。しかしそこでユーロ円にしたりユーロポンドにしたところで、前述の通り★の数は落ちません。ただ、あまりマイナーな例えばケニアシリング等を相方にしても勉強にはなりませんから、ここでは主要国通貨でありながらシンプルなオーストラリアで見ることにします。
オーストラリアなら25年間好景気で、相手の景気循環がありません。政治的な要因や地政学的リスクも殆ど無視できます。どちらかと言えばコモディティ価格がその手がかりになっている程度です。干ばつや洪水というのは景気に影響を与えるというよりはコモディティの生産量という角度から材料視されています。オーストラリアドル円なら★★★☆☆位まで下がりそうですね。

オーストラリアと日本を比較するのはかなりシンプルです。低金利↔高金利、加工貿易国↔資源輸出国、不景気↔好景気、財政不安↔財政黒字 など、これだけみると対極すぎて、豪ドル高円安は当たり前のようなイメージを持ってしまいます。これはごく自然な発想で私もそう思います。ただ、いくら潤沢な資源を埋蔵していても、地下に眠っているだけでは、ただの土です。つまり買い手が必要なのです。買い手はどちらか?それは日本です。オーストラリアの対日輸出額は対日輸入額の4倍程度です。つまりいくら対極で原則は豪ドル買い円売り基調とはいえ、行き過ぎれば調整がはいるという仕組みです。

イメージ 1

2000年からのチャートを見るとよくわかります。IT景気以降、世界好景気によるコモディティ価格上昇すなわちオーストラリア国土の価値上昇とオーストラリアドル高金利によって円から豪ドルへのフローが着実に積み上がり、サブプライムローン問題をピークに、リーマン・ショックでフローが引き上げられ、落ち込んだことが見て取れます。リーマン・ショックでも安泰のはずのオーストラリアがこれほど売り込まれたのは、それまでのフローが一方通行だったからです。↔の材料によって日本からオーストラリアへのフローの蓄積があり、これがリーマン・ショックでリセットされたと考えると、リーマン・ショック後の底値が2000年のシドニー・オリンピックのレベルに同じくしている、つまりオーストラリアが投資対象として一人前になったいわばスタート時点に戻ったのだと考えることができます。

現在はそのちょうど半値戻しくらいのレベルです。今後、やはり↔の対比を勘案すると、フローが蓄積すると考えれば豪ドル高、日本のマネーは引き上げるしかないと考えれば豪ドル安、と随分シンプルな考え方で対応できることがわかります。

では、勉強のために、もっとシンプルにできる、主要国の通貨ペアはないのでしょうか?

これ以上仕事サボるとリーマン・ショックくらい危険なので、
やっぱり続く。にします。



通貨というのはその国の総合力を測る指標だと言えます。もちろん為替というものは、金利差、GDP、貿易収支、財政、政治的なイベント、地政学的リスク、投融資のフロー等様々な要因が複雑に絡み合って変動しています。とはいえ、短期的な細かい材料を削ぎ落とせば、やはりその国の総合力の差によって長期的な方向性が決まっていくものでしょう。それはファンダメンタルズ分析の考え方そのものでもあります。

従って、例えばドル円相場においては、アメリカと日本の総合力の相対的比較でその方向性が決まり、ユーロもポンドも他は一切関係なく、純粋にアメリカ対日本の総合力勝負で長期的なドル高円安かドル安円高かの方向性が見えてきます。

しかしその比較は簡単ではありません。例えばアメリカドルは世界の基軸通貨ですから、ドルにペッグしている国の事情も影響してきます。例のドル円相場では、アメリカに加えてアジア各国+中近東各国だけでなくロシアや中国、南米までもがぶら下がってきます。これら混合チームと日本の総合力を比較するのはとてもできません。なぜなら、混合チームの中で完結している経済活動は相殺しなければなりませんし、ロシアや中国はいったいどれくらいドルにぶら下がっているか数値化することは極めて難しいためです。しかもチームの中でも仲間割れは日常茶飯事です。

ユーロとて、検証は非常に困難です。アフリカの一部は完全にユーロにぶら下がってますが、厄介なことに、経済的にはドイツの下請けとしてほぼ完全にリンクしているであろう、チェコや、ハンガリー、ポーランドからトルコにいたるまでのオリエント急行通貨は、一部ユーロ統合を控えてペック作業が進んでいるものの、現時点ではユーロに完全にぶら下がっているわけではありません。しかもイギリスポンドとの関連性も検証しなければなりません。この様に基軸通貨との総合力比較はプロのアナリストでも困難です。

一方で、日本はシンプルです。変動相場制移行以来、これまで一方向に円高トレンドを形作ってきたのは日本株式会社の技術力、つまり貿易黒字です。それに加え相対的にアメリカより金利が低いことです。長期的な方向性について、私が日本サイドは弱気としている理由は先日から記事にしていましたね。シンプルが故に日本サイドは弱気だということは予想できるわけです。

5年10年という長期的な方向感の予測方法は、言うは易し西川きよしだということがご理解いただけたかと思います。もっとも日本の悪材料は出尽くして固まっているので、日本サイドのことはある意味検証する必要がありません。あとは向こうさんの研究を続ければよいだけなので、他の為替動向を研究するよりも作業は半分ですみます。アメリカやユーロが日本よりもっと散々たる状況だとみれば、円高。まだ日本よりマシよとみれば、円安。まさに言うは易し滋賀県野洲市です。



次に中期的な予測について要因分析してみましょう。ここで影響するのは需給のバランスです。例えば株が下がったから安値でバーゲンセール買いをしたとしましょう。しかし需給のバランスが崩れている相場ならば、その後の反騰を期待はできません。バーゲンでつい流行の過ぎた服を買ってしまうようなものです。

為替の世界で、需給のバランスはマネーフローに現れます。主要通貨の中で特に日本円はシンプルです。日本から海外へ投資するマネーに比べて、海外から日本へ投資するマネーは殆どありません。日本株がちょっとあるくらいです。日本国債は殆ど日本人が消化しています。短期金融市場はゼロ金利なので、誰も投資するはずがありません。このように日本と外国との投資のやりとりは日本からの一方通行です。日本のマネーが海外投資に動けば円安、回収に走れば円高です。

今はギリシャ危機云々で、日本人は総弱気状態ですから、マネーフローが外に向かいません。しかし一度、フローが出だすと、ポンと円安に触れますから、すぐにトレンドフォローされ、みるみる円安にななるでしょう。逆にリーマン・ショックがあり、その後の戻りでは日本人はリスクを取らず、全体的には殆ど投資を再開していませんでした。そこにきてギリシャですから日本マネーはほぼ回収済み。もう円高に向かうだけのフローがありません。つまりフローによる円高リスクは限定的というわけです。

ただし、相手方のフローは前述の長期予想の話と同じく複雑です。

つづく
ヤフーブログは最大5,000文字しか受け付けないため。


オフショア投資ブログのランキング。面白いのでクリックしてみてください。同じ業者がいろんな名前で機械生成でアクセス作っているので上位には上がれませんが、それでも一時一位になってたこともあります。INという数字と OUTという数字が酷似しているサイトはそれぞれ同一の業者がわざわざ別々に立てているブログです。


マーケット概観(バックナンバー)
小生が最低月に1回、執筆し出稿していた原稿の一部です。従って本ブログで公表出来るのは1ヶ月以上経った過去の記事に限られます。最新のものを読んでみたいという方はコメントやメッセージ等でご連絡ください。

 
メリカ景気回復の進捗を見極めながら米金利の低金利政策解除の時期、つまり利上げに転じる時期を探るというのが、為替や株式、あるいは債券においても相場の動向を読むうえでの最大の要因とされていました。ところが8月のFOMCでは、FRBMBSなどの保有証券の償還資金を米国債購入に充てて金融緩和状の維持を表明し、利上げどころか金融緩和の方向性を打ち出したのです。これには米利上げ→ドル高のシナリオを待っていた市場参加者の売りを誘発しドル円相場は過敏に反応、824日には一時、83.57円のドル安値を記録しました。その後27日に行われたバーナンキFRB議長の講演の中で、「最近発表された経済指標は一段と弱くなっている」としながらも、「2011年の成長への条件は整っている」と米景気の回復期待感をもたせたこと、さらに「FRBは必要に応じて追加緩和策を実施する用意がある」とたうえで、「現時点では一段の措置を取るための具体的な基準や発動条件では合意していない」とこれ以上の金融緩和は想定にないことを言及しました。30日には日銀の臨時会合にて、本邦サイドも追加緩和を決めたため、一旦ドル円相場は落ち着きを取り戻し、現在に到るまで80円台半ばの安値圏で推移(最安値は914日に83.23を記録)しています。次ページチャートからも見て取れるように、このままジリ安トレンドに変化が見られるわけではないため、近く19954月のドル円最安値 79.75円を更新するのではとの見方も強まっています。
 
動車、電機、機械関連企業を中心に円高不況に悩まされた95年の相場と今回の円高相場についていくつかの観点から比較してみたいと思います。まずドル円相場80円台という実数字は疑いなく同レベルですから、各報道等にもあるように“超”の文字が踊る円高水準と言えます。この実数字を使った価格の推移を名目相場と言います。これに対し、ある基準日を定め、その日だけは名目相場を用いるものの、その後は両国(ドル円相場であれば日米の)の金利差を考慮して貨幣価値を再計算した価格の推移を実質相場と言います。

 
 ここで実質相場の具体的な考え方を例示してみましょう。例えば200012日の時点でドル円相場はちょうど100円だったと仮定します。その後、日本では10年間全くのゼロ金利で推移、その一方でアメリカでは平均2%だったとします。つまりアメリカでは年率2%のインフレで物価が上昇しているわけですから、言い換えれば貨幣の価値は10年間で2割も下落したことになります。逆に日本ではゼロ金利ですから、10年たっても物価も貨幣価値も変わりません。余談ですが、日本では銀行預金とタンス預金の価値が10年経っても変わらないのはこのためです。もしアメリカでタンス預金をしていたら、銀行預金に比べて10年で2割損をすることになります。すなわちタンス預金はデフレ経済のたまものということになります。

 これを整理すると2000年の時点で1.00ドル=100円だったものは、2010年の時点で1.20ドル=100円であるべきとの計算になります。1.20ドル=100円は1.00ドルに直すと83.33円です。つまりアメリカがインフレ、日本がゼロ金利であれば、実質相場においては相場の実数字が円高にシフトするのです。実際に1995年と現在とを比較すると実質相場では日米金利差に大きな開きがあったため約3割も円高方向にシフトしています。すなわち19954月の79円は現在の実質相場では実に55円に相当するまさに異常とも言える円高だったわけです。また20001月の名目相場101円は現在の実質相場では81円となり、現在の円高水準にほぼ等しい数字になることがわかります。すなわち日米の金利差を考慮に入れた実質相場で考えると、現在の円高水準は2000年初の円高で受けた感覚と同じレベルとなるのです。
 但し当時はユーロが発足直後で未だマーケットの信任を勝ち取れず徹底的に売り込まれている最中であり、またアメリカのITバブルに陰りが見え始めたことが重なり、ユーロや米ドルから逃避的に円が買われた時期で、現在の日米金利差の縮小によるリパトリエーション(外国へ投資されていた資金が日本に回帰すること)やドルペッグされている中国経済圏の台頭によって日本の貿易黒字相手国の米ドル決済ウェイトが高まっていることなどが円高要因となっている現在とは少し趣が異なるようです。
 
行相場の考え方によって、単純に過去の1ドル=100円と今の100円を比較しては感覚を見誤ることがわかりました。しかし、実行相場の考え方ではどこかある時点を基準にして正しいものさしとして利用することはできても、相場のトレンドを予測することはできません。そこで為替相場はその二国間の経済力の強弱によって変動していくものだとすると、長期的には購買力平価のドレンドに倣ってドレンドが決まると考えることができます。次に購買力平価について、少し探求してみましょう。

買力平価とは、日本経済新聞201096日朝刊によると「各国・地域の物価の違いや為替レートの影響を除いた基準。内閣府は「購買力が等しくなるような通貨の交換比率」と定義する。それぞれの国や地域で同じモノが同じ量だけ買える価格を示す。例えば同じ1ドルを使って日本と台湾で買い物をする場合、物価や為替レートが日本より相対的に安い台湾の方がたくさんのモノが買える。購買力平価ではこうした物価や為替の影響が取り除かれるため、実質的な豊かさや生活水準が把握できる。」としています。


グラフは財団法人国際通貨研究所発表のものです。この消費者物価PPP(PPPとは購買力平価のこと)をみるに、対米ドルではジリ高方向に推移していることがわかります。これは日米を比較した場合、特に日本の高度経済成長時代の終焉以降はお互いが経済成長率としては低い先進国どうしであることから「豊かさ」についての相対的変化が少なく、よって金利差だけ購買力平価を動かす大きな要因となっているためです。つまりドル円相場は日米の豊かさに相対的変化がなければ日米金利差分(日本の金利よりアメリカの金利が高いことが前提)だけわずかに円高トレンドとなることでしょう。
 しかしこれはあくまで日本円対アメリカドルの比較を日本経済対アメリカ経済で検討した結果にすぎません。問題は、アメリカドルは基軸通貨であり、アメリカ以外にも世界中で流通していることやドルペッグ制を採用している国が多いことです。特に日本にとっては、最大の輸出相手国となった中国の購買力平価について比較検討が必要です。
 
 そこでIMF発表の購買力平価の中から主要通貨について対円レートに換算したものを表にしました。2009年から2014年はIMFの予測値です。
 この数字から人民元(CNY)だけが実勢相場よりかなり乖離し、現在の人民元は対日本円で約半分の価値しかない、言い換えれば変動相場制になった場合、対人民元で日本円は半分の価値になるまで円安に動く可能性があるということが分かります。
イメージ 1

  
7月号でもお伝えしたように、人民元が完全変動相場制に移行することは今現在、可能性としてありません。従って購買力平価の観点からドル円相場の長期トレンドを考察した場合、日米の「豊かさ」に相対的変化はなくとも、中国が経済成長率でみても年率8%から10%のペースで「豊かさ」が上昇しており、このドルにペッグされた人民元の価値上昇に伴って、相対的な日本円の価値は徐々に下落するものと考えます。
イメージ 2

 
イメージ 3

 

マーケット概観(バックナンバー)
小生が最低月に1回、執筆し出稿していた原稿の一部です。従って本ブログで公表出来るのは1ヶ月以上経った過去の記事に限られます。最新のものを読んでみたいという方はコメントやメッセージ等でご連絡ください。

7月14日、国際通貨基金(IMF)は経済健全性調査の中で日本に対し債務の抑制を提言しました。IMFによるとポイントは
 
①日本の主要な課題は、高水準の公的債務の対GDP比率の引き下げ
②最近の欧州の混乱により、日本のソブリン・リスクに対する脆弱性が高まる
③消費税の段階的増税に焦点をあてた財政調整
3点ですが、本誌では特に①について重要視しています。
以下、IMFサーベイ・オンラインの提言訳文の重要部分を引用します。
 
I
MFのエコノミストは、世界的な景気後退の後、日本経済は力強さを増してはいるものの、一部の国におけるソブリン・リスクが世界的に鋭い注目を集める中、日本政府は長期的な経済の健全性確保に向け、信頼のおける財政調整計画を策定する必要があると述べた。
IMFは、世界第2位の経済大国に対する4条協議報告(定期評価)の中で、先進国の中でも公的債務の対GDP比率が最も高い国のひとつである日本の主要な課題は、公的債務の対GDP比率を引き下げることだと指摘した。先日、日本政府は、債務を抑制し赤字を制限する財政戦略を発表した。
ジェームズ・ゴードンIMF対日代表団長は、「債務比率の引き下げには大規模且つ長期的な調整が求められる。世界的に財政精査の流れが進む中、信頼に足る財政調整の早期実施の必要性が高まっている。我々は、日本政府が提示した財政戦略を歓迎するとともに、詳細な取り決めがなされることを期待する」と述べた。
IMFは、消費税の段階的増税が日本政府の新規財政戦略の後押しとなり、また、この調整は来年にも開始すべきだと考える。当局は今後10年間で毎年GDP比率1%ずつの基礎的財政収支赤字の削減を目指す必要がある。
(中略)

信頼のおける改革
景気の持ち直しが予想されるものの、最近の欧州での混乱により、日本のソブリン・リスクに対する脆弱性が明らかになった。先週、対日4条協議の報告結果を審議するために開催されたIMF理事会において、日本の包括的な税制改革、社会保障費以外の支出の伸びの抑制、社会保障制度の改革に対する支持を表明した。さらに、当局に対し公的債務の上限を定めることにより財政計画の信頼性を高めるよう促した。
5月にIMFエコノミストと日本の当局間で行われた協議後に発表された報告では、「公的債務水準の上限を定め基礎的財政収支黒字の目標を掲げる財政政策の導入が、財政調整の信頼性を高め、改善した財政トレンドの確保に資することになるだろう」としている。
日本政府は、前例のない水準にまで膨らんだ債務を抑制する必要性があることを認め、2015 までに政府の基礎的財政収支赤字を半減するとともに、遅くとも2020度までに基礎的財政収支黒字を達成するために全力を尽くす考えを表明している。(中略)
 
成長戦略
(中略)IMF報告は、日本の潜在的経済成長率を引上げるための構造改革を支持し、経済成長の加速が財政再建に資するであろうと指摘している。
ゴードン団長は、「改革は、健康や環境などの重要な新規成長分野にまで及ぶものとみられる。この戦略を起業、雇用、競争などを促進する措置により補完することで、生産性は向上し、労働力参加は増大し、日本はより魅力的な海外投資先となるだろう」とした。
 
言文の中でIMFは非常に重要なメッセージを世界に向けて発信しています。それは日本の財政問題が既に危機的状況にまで達しており、本邦政府による自助努力が相当なものでなければ、自国によってコントロールすることのできなくなるということ。そしてそれはすなわちIMFとして何らかの支援すべき対象となることを意味し、これまで数々の発展途上国への金融支援実績を残してきたIMFにとってみても、これはGDP世界第二位の先進国が起こした財政危機への対応というのは極めて異質なものであり、その経済規模からみても、相当な注意を要するという危惧をはっきりと表明しているからです。
 ポイントはそこだけではありません。提言文では2015年と2020年という具体的な時期が明記されていることにも注目しなければなりません。ではこの時期に何が起こるかを検証してみましょう。
 
I
MFは本年1月に”The Outlook for Financing Japan’s PublicDebt”と題したワーキングペーパーを発表しています。この中でIMFは、日本が1990年代を境にこれまで見ることのなかった多額の財政赤字を膨らませたにもかかわらず10年ものの国債利回りは7%台から2%台まで下落したことが、その後の公的債務の膨張を助長させた要因の一つになったということに着目しています。
イメージ 1
(赤色線は10年もの国債の金利水準、水色棒は公的債務GD比率)


なぜなら一般理論としては到底両立しようもない、先進国の中でも、「突出して高いGDP債務比率」と「突出して低い金利水準」という二つの状況を、日本はいつまでも継続させることは不可能であり、その構図が崩れる時こそ、日本が本格的な財政危機を迎える時だと考えることができるからです。
 
は日本の公的債務を支えている原資はどこから投資されてきているのでしょうか。IMFではこの最終的な出処の大方を日本の個人金融資産としています。これは日本銀行が作成している資金循環統計(200812月基準)を基にゆうちょ銀行の財務報告書等の情報を加味して概算させており、かなり精緻なものになっています。
 
 一方で日本の場合、国債発行残高のうち外国からの資金調達率は約6%であり、他の先進国、例えばアメリカやドイツのそれが50%から60%程度であることを考えると日本は突出しています。
イメージ 2
(縦軸は長短金利差、横軸は外国からの国債投資比率)


 このことから、これまでは有り余る日本の個人金融資産が、巡り巡って自国の国債を買い支えていたために、国債の金利は比較的低い水準に抑えられていたことがわかります。ところが、ここにきて頼みの個人金融資産残高は長引くデフレや高い失業率を背景に貯蓄率は低下しており、これらのデータを勘案すると、IMFでは個人金融資産残高は今後、年率2.2%以上の伸びを期待することができないとしています。
イメージ 3
(ピンク色線は10年もの国債金利水準、紺色破線は日本のプライマリーバランス(収支))


 他方、公的債務のプライマリーバランスはバブル期を除いて赤字であり、残高を劇的に減少させることはほぼ不可能です。すなわちこのまま公的債務の膨張が続けば、公的債務残高と個人金融資産残高がいずれ逆転する時がくることは確実です。
イメージ 4

(縦軸は残高、横軸は年、ピンク色破線は個人金融資産残高推移予想、紫色丸付線は公的債務残高(国債+財政投融資)推移予想、赤色線は国債発行残高推移予想)



I
MFでは公的債務残高との逆転を2015年、さらに国債発行残高だけでも2020年には逆転すると予想しています。
 
 IMFからのメッセージを解釈すると、この逆転時には外国からの投資を誘致せざるを得ない状況となり、欧米並みの長期金利の上昇は避けられません。長期金利が上昇すれば、デフレからインフレに転換します。ここで景気回復の足取りが遅れていれば、スタグフレーションという悪いシナリオも描けますが、それでなくともインフレによって購買力平価は下がり、為替は長期的に円安方向へ転じる大きな要因となると考えています。

マーケット概観(バックナンバー)
小生が最低月に1回、執筆し出稿していた原稿の一部です。従って本ブログで公表出来るのは1ヶ月以上経った過去の記事に限られます。最新のものを読んでみたいという方はコメントやメッセージ等でご連絡ください。

 4月には中国人民元の切上げに関する問題点とその時期について取り上げさせていただきました。その中で論じた通り先月中国側に一つの動きが見ることができました。それは619日、中国人民銀行は人民元為替制度の柔軟性を強化する方針を明らかにするとの声明を発表したことです。もちろんこれは4月号でお伝えした米為替報告書で中国を「為替操作国」に指定しなかったことに対する挨拶のようなもので、中国の為替政策に対する国際的な批判をかわすことが狙いです。その思惑通りカナダ・トロントG20でも中国の為替政策について議論されることはありませんでした。一方で中国人民銀行は人民元が大幅に上昇する可能性を排除することも忘れてはいませんでした。
 人民銀行がウェブサイトに発表した声明によると、「最近の国内外の経済情勢のほか、中国の国際収支状況の観点から、中国人民銀行は人民元の為替制度の改革をさらに進め、為替相場の柔軟性をさらに高めることを決めた」としていますが、あくまでも人民元為替制度に関する特定の変更には言及していません。
 日本ではこれを人民元の切上げが発表されたとの認識する向きが多くありますが、この認識はあまりにも早計です。少々乱暴かもしれませんが、この声明は、今後も中国政府のコントロール下で人民元市場を変動も固定もするのだという宣言ととるべき内容で、中国政府が人民元切上げに関して何らコミットしていないのです。
 

中国人民元の動きをもう一度おさらいしてみたいと思います。中国の管理相場制は、国内人民元と外貨兌換券の2通貨制を廃止した1994年から20057月まで採用されました。その内容は、
  ①需給のバランスをみて中心レートを決定
  ②一日の変動幅は0.007%以内
という極めて保守的なものです。それでも①②の条件なりに変動はあったのですが、それも1998年、アジア通貨危機の影響から逃れるため、実質的に1ドル=8.276元に固定しています。その後香港返還後の影響や世界の為替相場の安定を見極めた中国は、2005721日、米ドル完全固定相場制だったものを対ドルで2.1%切り上げたうえで、通貨バスケットを利用した管理変動制へ移行しています。当時のこのニュースが与えたマーケットに対するインパクトは、今月のニュースよりもはるかに大きく、それは通貨切上げという一種の為替操作というよりも、来るべき人民元の変動相場制への準備の意味合いが強いものでした。そしてこれ以降、現在まで人民元相場は「管理変動制」ですが、それは公式には米ドルペッグ制ではなく主要通貨バスケット制をとっています。またバスケットの比率は非公表ですが、中国人民銀行総裁のコメントを総括してみると、
  ①米ドルの割合は50%以下
  ②米ドル、ユーロ、円、ウォンの合計割合は70%以上
とのヒントも出ています。表は中国の貿易取扱高を基に算出した理想的な通貨ウエイトです(出所: Standard Chartered)
イメージ 1

この条件の下、徐々に切上げを続けた人民元ですが、6.83元程度まで切上げがなされたところで、リーマンショックが発生、危機回避から切上げは中断、再び固定化されていました。
 

 外貨準備高に着目すると、中国はすでにその金額は2.45兆ドル相当額となり、日本の1.04兆ドル(いずれも20103月現在、出所: IMF)の約2倍という歴史上類を見ない金額まで膨張しています。20062月に日本の外貨準備高を超えて世界一になったニュースは記憶に新しいですが、その時期と比較してもわずか4年で倍以上に増加しています。一方で日本のそれは4年間ほぼ均衡しています。これほどまでに膨れ上がった理由はただ一つ、連日実質的かつ恒常的に行っているドル買い元売り介入の結果だと言い切っても過言はありません。そしてその目的もただ一つ、それは中国の国益です。
 ここでの中国の国益とはなんでしょうか。それは中国が掴んだ世界の工場という地位を維持すること、すなわち輸出競争力を確保することだと思われます。為替介入によって自国通貨を安く誘導することはその最も単純かつ即効性のある手法なのです。
ところで、為替介入を行うことによってアメリカドルの資産(大半は米国債)が膨らみますが、逆に人民元の債務(主に政府短期証券など)残高も上昇します。これを放置すると人民元の上昇によって中国政府、人民銀行は大きな為替差損を発生させ、結果プライマリーバランスを大きく崩す可能性を高めるため、必ずどこかで方針を転換する必要がでてくると考えられます。
 今後、中国は原油など資源価格の上昇により、むしろ人民元を切り上げた方が内需拡大に繋がるとの理由で政策転換するような場面が訪れない限り、中国のとれる残された手法は穏やかな元高誘導という選択肢しかないのではないでしょうか。
 では、一体どのようなペースで人民元は切上げられていくのでしょうか。そのヒントは過去の日本にありました。
 

 日本円が1ドル360円の固定相場制からスミソニアン協定合意による為替調整を開始したのが19711218日であり、この日から308円まで日本円の切上げが始まりました。グラフ(数値出所: IMF)では日本円の360円を1として、どれほど価値が上昇したのかを倍率で時系列に示しています。横軸は為替市場が開場していた月数を現しています。その後日本円は協定通り1年を経たずして切上げ目標の308円に到達、しばらく相場は固定されますが、その後ポンド危機に起因してスミソニアン体制が崩壊すると、1973214日に日本円も完全変動相場制に移行され、わずか半年で254円まで円高が進行しました。さらに第一次オイルショックとその影響による日本の国際収支の悪化によって円は306円まで円は売られています。ここから日本は高度経済成長時代に突入、経常収支の大幅黒字を背景に197810月には177円までの円高を記録し、第二次オイルショックが深刻化することで260円台まで売り戻されています。
 一方で、人民元は2006721日を0ヶ月目(グラフ上の赤色線)とすると、前述の切上げで6.83元程度まで人民元の上昇と再度対米ドル固定化を経験したのち現在に至る中国にとって、変動化への道のりは約60ヶ月目、日本の道のりに換算する197612月に相当します。
 
イメージ 2

 現在、赤色線はちょうど青色線のレベルと一致しています。また日本は当時スミソニアン合意の崩壊によって否応なしに完全変動相場制に移行しその変動幅は最大年率約48%だったことを考えると、中国元の切上げのペースは非常に緩慢でアメリカ等から暗に批判を受けながらも、金融危機など混乱を避けつつ非常に計画的にしかも為替相場を中国の手中に収めながらプロセスを進行させていることが覗えます。中国にとってのリーマンショックは当時日本のオイルショックに相当しており、それはあたかも当時日本は荒波に揉まれながらも航行を続けたのに対し、今の中国は一旦陸に避難して順風満帆の時を待っているかのようです。
 このグラフから推察すると、今回の中国の為替柔軟化というメッセージは中国にとっての次のステップを目指すというメッセージであり、具体的には今後も青色線のボトムラインに沿うように、ここから4年後程度までに1.4倍の5.9元あたりを目標にセットしているのではと予想します。
 もし予想とおりこの水準まで元高が進行すると、現在1元あたり約13円ですから、ドル円相場が約90円で不変であれば1元あたり15.2円程度まで、さらに本邦財政問題の顕在化等で円安が進行しドル円相場が120円まで上昇していた場合、1元あたり20.2円の換算レートになります。

マーケット概観(バックナンバー)
小生が最低月に1回、執筆し出稿していた原稿の一部です。従って本ブログで公表出来るのは1ヶ月以上経った過去の記事に限られます。最新のものを読んでみたいという方はコメントやメッセージ等でご連絡ください。


月にはギリシャ問題とギリシャ・ドラクマの隠れた問題点について取り上げさせていただきました。5月中旬以降、ニュースではこの問題は沈静化しつつあるとの論調が多数を占めています。それは5月上旬にはIMFECBの方針・動向すでに明白になっていたことやスペインの格下げ等もすでに織り込み済であったことも大きな要因です。そもそも財政問題という長期的な問題をわずか数カ月のスパンで解決できるはずもなく、これでは為替や株式相場の投機的材料として期間的にミスマッチがあるため、売買の手掛かりとして飽きがきていると言えます。これは例えば、プライマリーバランスが大幅赤字、すなわち返済余力の無い日本の財政問題が解決される期間を計算すると、数学的には無限大の長期にわたる問題となってしまうことから、短期的な材料を求めるドル円相場や日経平均にとってみると、実際に日本国債の格下げ等の急激な材料が出てこない限り、このことだけを手掛かりに相場も一喜一憂することができないという状況と全く同じ構図です。
 しかしこの問題はメキシコやアルゼンチンの通貨危機と異なり、ギリシャがすでにユーロ圏に統合されていることから、数ある過去の通貨危機・金融危機の事例を参考にできない、まさに手探りの状態であることを意味しており、ギリシャ問題解決に向けての様々な行動は歴史的にみても初めての試みであると言えます。その点を考慮すると、今後も長期的にこの問題をPIIGSの立場、ユーロ圏あるいはEUの立場で注視しておくべきであると考えています。
 

 ギリシャ・ドラクマの話の前にそもそもユーロについてどのように理解すればいいのかという、非常に多くのメンバー様からの反響をいただきました。そこで今月は視点をかえて、危機を起こした国や通貨からではなく、その相手方からみた考察をしたいと思います。ユーロの生い立ちや誕生までの歴史は非常に多くの書籍も発刊されており、詳細はそれらに譲るとして、先ずはユーロを発足させる、あるいは参加する夫々の思惑は何か?ということを整理する ことが、ユーロの本質を理解する一番の早道だと考えます。
 

 ユーロ参加国の中で最も影響力のあるのはドイツです。それはドイツがEU諸国の中でも最もGDP規模も大きく、技術の集積もあるためであることは言うまでもありません。当時フランス、オーストリア、ベネルクス3国などはERMと呼ばれるドイツ・マルクにターゲット・ゾーン制(中心値を設け上下2.25%の変動幅を許容、上下限到達で無制限に介入する制度)をとっていました。ドイツにとってはこの実質的なマルク経済圏を基盤に、マルクが後にユーロと命名される単一通貨へ発展させる過程において、その中心的地位を確保することで、EU全体への影響力を行使することが可能になります。そのためにドイツはユーロ発足に向けてのリーダーシップを演じていたと思われがちです。
 しかしドイツにとってはユーロ発足にむけて、それを経済的なメリットよりも、むしろ第二次世界大戦の戦争責任を最終的にとるという意味合いが強いと考えます。すなわちドイツ・マルクという強い自国通貨を自ら放棄することにより、大戦後に一部で懸念されていた、ドイツによる経済的な覇権主義に対する疑念を根底から断ち切ったと言えるのです。これによりイタリアなどの周辺国とも完全固定相場となり、物価や賃金格差の是正に貢献できるため、ドイツの経済力をユーロ圏の周辺諸国へ移転できることになります。
 これは大方経済的なメリットだけを追求し、参加するか否かを様子見しているイギリスとは全く対照的な行動です。一方で農業国であるフランスでは度々マルク高による貿易面の不均衡や経済力格差の是正に追われており、マルクへのターゲット・ゾーン制度よりもさらに踏み込んだユーロ統合の道を選んだことは、やはり自然な流れだったと言えるでしょう。
 

 現在ユーロ圏はオーストリア、ベルギー、キプロス、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、アイルランド、イタリア、ルクセンブルク、マルタ、オランダ、ポルトガル、スロベニア、スロバキア、スペインの計16か国、人口32500万人を擁する経済圏となっています。
 またEU加盟国がユーロへの通貨統合を計画する際、先ず対象国の通貨と、ユーロ間の為替相場を一定の変動幅で連動させる必要があります。そこでEUERM IIという制度を設け、該当通貨がユーロへ統合される前にある程度の期間をおいて為替相場を安定させようとしたわけです。つまりERM IIは非参加国に通貨統合採択を促進させることを目的とした制度なのです。これは1999年に実施されました。EU諸国にとってERM IIへの参加は任意ですが、逆にユーロへの通貨統合に参加するための必須条件であり、また、参加すればユーロ導入の準備段階である為替の変動幅を一定水準以下に抑えることになります。すなわちERM IIに参加するということは、実質的に対ユーロへの制限付き変動相場制に移行することになります。ERM  IIでは対ユーロの中心レートが設定され、変動幅は上下15%となり、それを超えた場合にはECBと対象国中央銀行による自動的無制限介入が行われることでユーロへの安定を保持しています。


ERMIIに現在参加しているのは次表のような国々です。実際の変動幅をご覧いただくと、デンマークは国民投票などのコンセンサス待ち、バルト3国についてはすでにインフラ整備や経済環境が整い次第ということがおわかりいただけます。

 
 
 
ERM-II
加入日
変動幅(±)
経緯
許容
実際
99
11
2.25%
<1%
ユーロ誕生の1999年に ERM-II に加入。
04
628
15%
固定
1992620日の再導入以降、ドイツマルクと相場が固定。
15%
固定
従来米ドル固定相場だったが、200222日以降はユーロへ固定化。
05
52
15%
1%
200511日にSDR から対ユーロのカレンシーボード制へ移行。
 

しかしこの中で特筆すべきは、実はこの表にない2つの通貨、イギリスポンドとスェーデンクローナです。この2通貨はERM IIの前身であるERMのメカニズムに引き摺られる格好で92年に通貨危機を経験しています。当時のECでは、前述のERM79年来設定していましたが、この成功を見たイギリスやスゥエーデンは90年から91年にかけ相次いで参加しています。しかし根本的にドイツ、フランス側は好況、イギリス側は不況という経済状況のギャップを残しながら、参加を急いだために、ここに目をつけたジョージ・ソロスをはじめとした投機筋によって、大量のポンド売りマルク買いを浴びせられ、ついにはイギリスのERM離脱に追い込まれたという経緯があります。スゥエーデンに至ってはERMに非公式なペックだったために、為替介入についても他参加国の協力を得られず、単独介入を続けた結果、スゥエーデン中央銀行はわずか6日間で260憶ドルもの外貨準備は失っています。この経験がこれら2国のユーロ統合を阻害し、また現在でもその目処が全く立っていない要因のひとつになっているのです。とはいえこれら2カ国もEUメンバーであることにはかわりなく、またギリシャ問題に端を発するユーロの弱体化は却ってドイツ・マルク一人勝ち状態を復活させることになり、対岸のイギリスやスゥエーデンにとっても再び歴史が繰り返されるような事態にもなりかねません。
 従って、ギリシャ問題の発生の波紋は長期的にみると、EUというチームは劣等生の離脱よりも、むしろ優等生の参加を促進し全体の力(経済力)の底上げを図る方向に広がり、加速すると予想しています。

このページのトップヘ