インプライド・ボラティリティを売買する。この感覚は個人投資家には非常にイメージしずらいものになっています。それはなぜでしょうか? 

例えば、クルマやバイクを運転しているとします。時速60kmで走ることに対してのイメージがありますか?と質問されれば普段ドライブしている人なら大抵の人ははいと答えることができるでしょう。マイカーで、同じ道を同じ時間帯に同じ天候で走ったとすれば、慣れればメーターを見なくてもたいがい今何キロで走っているかわかるものです。ところが、速度ではなく、加速度のイメージはありますか?と聞かれたらどうでしょうか。先の条件で、信号が赤から青になりスタートしてから時速60kmになるまでの秒数がどれくらいかかっているか意識しているドライバーはまずいないでしょう。時速30kmから60kmまで一定のペースで20秒で加速してと言われても相当な練習をしないと成功しません。

このように、数学的な単語を使えば、「一回微分」されると私たちはとたんにイメージをしにくくなります。

蛇足ですが、クルマやバイクならスロットルのレスポンスが良いので、一瞬で一定の加速度を得ることができます。しかし、それが電車だと重いので加速度が一定になるまでにすら相当な時間がかかります。そんな時は「二回微分」して加速度の変化の度合いまでも計算しなければなりません。速度を一回微分すると速度の変化の度合い、つまり加速度。さらにもう一回微分すると、加速度の変化の度合いになります。N700A系の定速走行プログラムはもちろん加速度の変化の度合いまで計算されているはずです。

話を元に戻しましょう。インプライド・ボラティリティを算出する最も有名な公式はブラック・ショールズ・モデルです。ブラック・ショールズ式によって、インプライド・ボラティリティがわかればオプションのプレミアムが算出でき、逆に実際に市場で売買されているオプションのプレミアムからインプライド・ボラティリティを算出することができます。株式でも為替でもオプションのプレミアムとボラティリティは日経新聞にも掲載されており、ブラック・ショールズをエクセルなどの表計算ソフトで再現すれば、検算することもできます。

ここではあえて公式はだしません。たとえ公式をだしても読者の方で検算したい人はいないはずです。なぜならそんなことまで知らなくてもオフショア投資はできるからです。ですが、興味本位で公式を覗いてみる(ウィキペディアじゃ雑な説明でサッパリわかりません、ちゃんとした学術書を買いましょう)と、ザックリですが、オプションのプレミアムとか現値とかストライクレートとか金利差とか期間とか入力して、一回微分するとインプライド・ボラティリティが算出でき、逆にインプライド・ボラティリティを一回積分する過程を経てオプションプレミアムを算出していることがわかります。

微分積分の関係だけで比較すると、現値やプレミアムが速度なら、ボラティリティは加速度です。私たちにとって、現値やプレミアムは実際に売買したり支払ったり受け取ったりするものですからイメージしやすいでしょう。反面、インプライド・ボラティリティを売買ってどういうこと?になるのはこのためです。

ところで、ひとくちにオプションの売買といっても、その種別がコールだのプットだのと2種類あるだけでなく、ストライクや期間は理論上は無限段階、現実的に考えても10から20段階あり、その組み合わせは最低でも数百通りになります。どの組み合わせが一番お買い得か、一番高値がついているかを計算してアービトラージ(裁定取引)するのが数理系トレーダーの醍醐味でもあるのでしょうが、それではポートフォリオが細かくなりすぎて、専業でないトレーダーはわけがわからなくなります。

良く考えてみたら、オプショントレーダーの売買対象となっているオプションのプレミアムは、ブラック・ショールズを介してインプライド・ボラティリティと連動しているわけです。ですから、いちいちオプションのプレミアムを売買しなくても、その元になっているボラティリティを売買しておけば、トレーダーにとって同じ効果が得られることに気が付きます。
もちろんこのことは80年代からとっくに気づいていた話であり、為替の世界においてもオプションを売買するのではなく、ボラティリティを売買してしまうという手法がインターバンク市場では定着していました。

ただ、厄介なのは期間(限月といいます)。これは特に債券先物取引で起こる問題です。ボラティリティを売買してしまうという発想はよいのですが、ブラック・ショールズの中には期間(限月)という要素が含まれています。例えば、買ったボラティリティの期間が6ヶ月であれば、宿命的にそのポジションを6ヶ月以上持てなくなります。

そこで、限月が近くなってきたものは早めにポジションクローズして、次の限月に取引を移行させなければなりません。これは個人投資家にとって辛い作業です。思わぬ損がでることもあるでしょう。

そこで、登場するのが指数化という商品です。債券先物指数がその走りで、指数は一定のルールに基づいてどんどん限月を先送り、価格の連続性を保ってくれます。これによって限月を気にせず買い持ちや売り持ちができるようになります。個人投資家がボラティリティ自体を売買するにもこの限月先送りをしてくれるシステムが必要で、それを実現させたのがCBOEなのです。皆が使う指数になれば出版社は儲けもの。メンテだけで一生メシが食えるという寸法です。

http://www.cboe.com/images/new/CBOE_logo2.pngVIX指数(Volatility Index)は、CBOE (Chicago Board Options Exchange) が作って売っている「商品」の一つです。日経平均株価は日本経済新聞社(日経クイック)が作って売っている「商品」であることと同じです。指数を営利目的で使う時は商標を使用する権利、いわば著作権を買わなければなりません。このブログのように指数を非営利で使用している分にはいくらでも(個人使用目的の範囲で)記載できます。しかし、日経平均株価連動ファンドだとか、日経平均株価が12000円になったら元本が半分になります、みたいな仕組預金を作ったら、それはすなわち営利目的になるので、使用者は事前に日本経済新聞社に著作権料としての料金を払わなければなりません。同じ要領で、TOPIXを使えば東証に、FTを使えばFTに、S&Pを使えばS&Pにそれぞれ支払います。

CBOEのオフィシャルサイトを訪問すれば、右側の目立ったところに自社商品を並べています。それだけではユーザーが物足りなさを感じるでしょうから、他社商品であるS&Pやダウも並べています。ここで、VIXはS&P500のボラティリティ指数ですから、CBOEとてS&Pにお金を払っているんだろうなと余計な想像もできます。

VIXは、http://www.cboe.com/Strategies/VIXProducts.aspxに定義されています。意味不明な日本語のサイトをサーフィンするより、本家サイトの英語を頑張って読んだほうがよっぽど理解が進むでしょう。何しろ指数を作って売っている出版社本人が書いているのですから。

つづく(好評なら)


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三男が作っているレモンビネガー第二弾が1週間寝かせて出来上がりました。味見させてもらいましたが、確実に進化しています。わずかにビネガー多めの、氷砂糖少なめ、それに生姜を少々。東京炭酸水で割って絶品、売り物になります。