シャープレシオなんて個人投資家が知ってなんの得になります?なんの投資判断材料になります?全くならないでしょう。では、今日、あえてなぜシャープレシオなどの金融用語(指標)について知っておこうとしているのでしょうか?それはこういった小難しい言葉を乱用、というより悪用して売り込みたいファンドを少しでも良く見せかけようとする有象無象業者の軽口に乗らないようにするために、一般個人投資家としても少しは武器を持ちましょうというのが趣旨です。

そもそも、このブログでは、証券外務員試験をパスしたいギョーカイの人ではなく、あくまでオフショアのファンド投資をしてみたい、実際にしているという一般投資家向けに話をしていますので、「正確な表現」には拘らず、あくまでも「正しい概念」を念頭に全ての記事を書いてきましたし、これからもそのセグメントを変えるつもりはありません。



一方で、オフショアでもオンショアでも、ファンドの世界だけでなく、株式や債券など投資商品全般で用いる指標の名前の中で、個人投資家であってもぜひ押さえておきたいものは、わずか2つです。それはリターンとリスク。以上。

それだけでは、そらそうやけど、それがどうした?になってしまいますから、今日はもうちょっと掘り下げておきましょう。まず、投資指標を見るにあたり、認識しておかなければならない、もっとも大事なことは、渡辺真知子の迷い道から学べます。

現在過去未来は全く別の次元であるにもかかわらず、あたかも同じことが起るのものとして、過去を未来に引きずるとロクなことは起こりません。ポートフォリオ理論などの金融工学を手がけるうえで、計算しようとしている、あるいは利用しようとしている指標について、過去と未来は明確に区別しなければなりません。

ここでリスクとリターンについて別々に考えてみましょう。

まず、リスクから。明確に区別せよと言いながら、リスクについてはある程度過去を引きずることができるとも考えることができます。例えば日経225連動ファンドに継続的に投資していたとしましょう。去年と来年、あるいは10年前と10年後で感覚的にさほど取っているリスクに変化があるとは思えませんし、実際、リーマン・ショック時の除けばおしなべて25%あたりを中心に推移しています。

とはいえ、過去のリスクと未来のリスクは明確に区別しておかなければなりません。そこで純粋に過去の実績を計算したものをヒストリカル・ボラティリティ、未来のリスクを織り込んだものをインプライド・ボラティリティと呼んでいます。

ところで、リスクのことを気軽にボラティリティと呼んでいますが、ボラティリティとは標準偏差のことです。標準偏差は英語ではSD、つまりスタンダードディビエーションですが、これは数学英語であって、金融英語のボラティリティと同義語です。もっともSDには当然にヒストリカルし存在しませんが。となると、受験を経験した読者の方ならだれでも親しみやすくなるはずです。

ご自身の得点が80点、平均点は50点というテスト結果がたまたま2回あったとしましょう。この条件でいくと、ご自身の偏差値は同じになるでしょうか?答えはなりません。自身の偏差値は他の全受験者の得点に左右されます。1回めのテスト結果は他の受験者の大方が平均点に近い範囲、例えば、60点から40点以内に収まっていたとします。2回めのテストではみんなバラバラで大方が80点から20点までバラエティに富んでいたとします。すると、ご自身の結果は同じ平均点+30点という好成績にもかかわらず、2回めの偏差値は、1回めの偏差値より下がってしまうのです。

そう、駿台のテストで偏差値80台に乗せるには、ある程度のテクニックが必要なのです。他受験者がおしなべて平均点あたりに留まり、自分だけが突出して高得点を出さなければ、80は狙えません。一般高校生がそれを実現できる狙い目は唯一、数学の全問記述式の難問模試くらいでしょう。選択肢問題がはいると、得点が均一化されてしまいます。回答の出足が書きだすことができなければ即ゼロ点になってしまう、数学の記述式問題で一ヤマ当てるのが一番の早道です。

ここで、この受験者一人一人がファンド一つ一つだと見立ててください。ファンドの場合、一回の好成績に浸っているわけにはいきません。運用は毎日つづきますから、毎日(投資家目線では締めに合わせて毎月と考えてよい)テストを受けているようなものです。

つまり、投資指標を見る目として大事なことは、ファンドの絶対的なパフォーマンスよりも、同じ分野に投資している他のファンドにくらべてどれだけ上をいくか、偏差値をみることだということがわかります。

例えば、2011年は上昇率は38.87%、2012年は19.33%でした。成績の良いファンドですから書いましょうというのは、80点という得点だけ見て満足している受験生に当てはまります。井の中の蛙型投資とも言えますね。現にこのファンドも2011年はファンド運用開始に向けてビジネス案件を多く仕込んでいただけであって、ある意味たまたまの数字であって、年率10%は行きたい、15%超えれば満足してもらいたいと言っています。

もう一つ、さらに区別しておかなければならないことがあります。それは
  1. 個々のファンドが毎月テストした結果を並べて、その結果を母集団として標準偏差を計算する例
  2. ある基準日に同じ分野に投資する幾つか(なるべく多く)のファンドの成績を母集団にして標準偏差を計算する例
があるということです。1は自分自身での継続的な戦い、2は他との単発的な戦いということになります。

例えば、シャープレシオ:10.97、標準偏差:1.59、運用成績がプラスの月:24/25です。凄い数字だから書いましょう、というのは、1のケース、つまり一受験者が25回模擬試験を受けて、その成績を母集団にした結果、慣らされた成績を取ってくる優等生であることを言っているにすぎません。他ファンドとの比較ではありませんし、現にこのファンド会社も唯一無二なビジネス系ファンドですから、他との比較もしようがなく、よってこの数字が凄いから買ってくれというアピールは決してしていません。

また、株式や債券など金融マーケットに投資していて、同じ分野にライバルも多いファンドでは、ベンチマークの標準偏差とファンドの標準偏差を比較してファクシートに掲載したりしています。さらに気の利いたファンドはモーニングスター等と契約して、自身のパフォーマンスランキングにリストさせることで、投資家に他との比較をしてもらいやすいように工夫しています。

次にリターン。日本の投資信託のレポート類には必ずこう記載されています。過去の実績は将来の成績を保証するものではありません、と。これはオフショアファンドでも全く同じで、ファクト・シートには必ずディスクレーマー(免責文言)が記載されています。まず、この直訳的表現は修正すべきでしょう。過去の成績だけをみて投資判断しないでください、に。このように、リターンの場合、個人投資家でも明確に過去と未来の区別が感覚的にもつけやすいのではないかと思います。現代ポートフォリオ理論の中での未来予想において、リターンは単にリターンとは言わず、明確に「期待リターン」と表記しています。

日経225が先々月10,000円、先月11,000円、今月12,000と来ても、来月は13,000円になるとは誰も信じないのと同じです。個人投資家でもリターンの実績と期待リターンは全く別物という感覚が身についています。

注意すべきは、ビジネス系ファンドと金融マーケットに投資するファンドとの区別だけですが、ここは勉強会でも説明していますので、割愛します。が、先の例のファンドの投資先がコモディティの現物(ロング)やCTAだと聞かされたらどう思いますか?いよいよ不自然だと感じることでしょう。この不自然だと思う感覚とその疑問をファンド会社にぶつけることによってKijani Commodity Fundがこのような金融マーケットに投資しているものでななく、純粋なビジネス系ファンドであることに気が付かされることとなったのです。

この記事を読む前になら有象無象にそう言われてもなんとも思わなかったことが、記事を読んだあとに思い返すとそれはおかしいという感覚が身についていただけたのなら、誰でも読めるブログ冥利に尽きるというものです。



最後にオマケでシャープレシオ。正しい概念に照らし合わせると、リターンをリスクで割った数字、先の例ではKijaninのファンドがスタートした時のNAVは100、それが2013年1月時点で約174あたりまで上昇しているので、総リターン(年率換算ではない)は1.7程度。リスクはファンド会社が計算したものをそのまま使って1.59とすると、ざっくり174 / 1.59 = 10.97になるというだけのことです。

このシャープレシオが高いほうがよいというのは、上述の区別1においてそのファンドを時系列的に観察して上昇した場合や、あるいは、区別2において他の同種のファンドと比較しても高い数字であった時にはじめて言える論法です。何とも比較していないたった一つの数字、10.97です、凄いでしょうというのは愚の骨頂だということがわかります。

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最後にKijaniのその後の動向はどうなったでしょうか?3月までのファクト・シートは10日過ぎに発行されると思いますので、メルマガ読者様には配信します。ここではシャープレシオに注目してみてください。ボラティリティ=標準偏差が0.97にまで下がり、2013年2月のパフォーマンス2.52%上昇が乗った分NAVが上昇したので、結果、シャープレシオは11.98から14.53まで上昇しています。大幅に上昇しました、凄いでしょう。

ですが、それはそれだけのことです。ビジネス系ファンドのキジャニをシャープレシオを拠り所に投資判断する人はここの読者の中にはいないでしょう。ビジネス系ファンドにシャープレシオだのを持ち込む方がナンセンスだと言っても過言ではありませんね。

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多くの読者様からご心配のメールいただきありがとうございます。目眩は季節的なもののようですっかり良くなりました。
となると俄然、検査をうけたMRIの機材が気になります。東芝病院で検査をうけましたから、メーカーはもちろん東芝の最高機種ヴァンテージ・タイタンでした。名前からして良いですね。それにしても、横断面は当然、斜めも遠距離ながら何とかなるとしても、縦断面があれほど綺麗に取れるとは驚きです、フレミング左手の法則に反してるんちゃうかと思うのですが。