仕組債のリスク・リターンについては前々記事にしてきましたが、今日は仕組債の中でもコーラブル債に的を絞って解説します。仕組債の中のコーラブル債とは、自分では中途解約できないが、発行体は中途償還することができるという、期限の利益を放棄する権利を有しています。

ところで、期限の利益とは一般的にお金を借り手にとっては最大の利益のはずなので、その利益を放棄するというのは不思議な感じですが、それがデリバティブの面白さともいえるでしょう。デリバティブでなくても、身近にあるもので例えると定期預金や定額貯金があります。10年定額貯金を預金者から8%で預かっていたものを、3年経ったところでバブルがはじけて不経理になり、郵便局からこの定額貯金は途中で終わりにしますので預金は全額返します、となったら預金者としてはたまりませんよね。お金を預かった方(借りた方)から約束を反故にできないのが常識ですが、その常識を反転させるというデリバティブを使っているのがコーラブル債なのです。

コーラブル定期預金というのももちろん存在します。が、一般預金者が(勝手に)混乱するするので、日本ではあまり一般化していません。その点仕組債だと称すると、怖いものというイメージが先行して(勝手に)逃げていきますから、真の利便性は世間には伝わらなくても、無用なトラブルは避ける事ができます。

日本で「元本保証」という言葉は、預金商品ににだけ使用を許されています。いくら安全な債券や保険商品があってAAA格の会社が保証していても、元本保証という言葉は使えません。その代わり「元本確保」という言葉を使います。このことによって誰がどんな手段で確保してるんだ?と投資家に注意喚起をしているのです。一方で元本保証と聞くと、投資家はクレジットリスクについては考慮する必要がないという意味になります。
銀行預金以外の金融商品に元本保証という言葉を使っているような有象無象は、その育ちを露呈させているようなものです。

さて、一昔前まではこれでめでたしでした。預金=元本保証でしたから。ところが、ペイオフの問題がその根底を覆してしまいました。そもそも、銀行(当時の郵便局も含む)だけに、元本保証という言葉の使用を許した背景には、銀行が元本を保証しているという裏に預金保険機構を通じて、国が預金保険法で保証しているという事実があります。直接保証しているのは銀行自身ですが、結果的には国がその保証をしているため、すなわちクレジットリスクについては考慮不要だったわけです。ところが、ペイオフ制度の導入によって、全ての預金が預金保険機構の対象ではなくなりました。元本保証商品の一部は銀行の保証にすぎなくなったのです。

1. 預金保険機構保証付き、元本保証預金
2. 預金保険機構保証なし、元本保証預金
3. 元本確保型債券、保険など

の3種類になってしまいました。ここにコーラブル債やコーラブル預金がはいってくると、

4. 元本保証なし預金
5. 元本確保なし債券、保険など

のカテゴリが増えてきます。1は別格ですが、2と3、4と5にはクレジットリスクの観点から上下関係はありません。ところが、このブログの読者層にもならない一般の人は、この序列をイメージに植え付けられているので、発想の転換をすることができません。下手すると3と4は順位が逆と思っている人も多いでしょう。何しろ預金ですから。このことからコーラブル預金が発展しない理由が見えてくると思います。

そして本題ですが、リスクを承知した勉強熱心な投資家だけが、5のメリットに気がつくはずです。まともな金融商品ならリスクが高い分、期待リターンも多くあるわけですから。
では先に説明したなんだか不平等条約みないな条件は、投資家にとって有利に働くのでしょうか?
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過去の状況からみて、かなり機能していると結論づけることができます。中途償還(コールといいます)されるということは、これ以上もうそんな高いクーポン払えない、元本返すから契約打ち切らせて。というギブアップのサインです。つまり投資家にしても最初からコール狙いで買い込んでいき、思惑通りコールされたら、素晴らしい利回りが、逆にコールされずに満期まで持ち込まれると大きな損失が発生するリスクを抱えます。

コーラブル債は条件をみてコールされる自信があれば、買うというのが半ば鉄則です。コーラブル債を買って、めでたくコールされたもののリストをみれば一目瞭然ですね。コーラブル債に分散投資するファンドがある程度一定のパフォーマンスで回るのも合点がいきます。

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